自学自習・自立への道

子どもの発達のしくみ

子どもの発達に関して、「誕生時は無力・無能な存在で、成長するにつれ少しずつ有能になっていく」という考え方がこれまでの常識でした。ところが、ここ30年来の研究により、子どもはたいへん有能な存在として生まれてくる、つまり大きな「潜在能力」をもって生まれてくるということがはっきりしてきました。親のやっていることを模倣する能力、そして、それを支える知覚、認識能力を赤ちゃんは「潜在能力」として持っているということなのです。

子どもの元々持っている潜在的な素質と能力は、生まれつきの個人差はないくらいどの子も持っている能力と考えられます。そして、その潜在能力を発揮して、使えるようになった能力が「顕在能力」であり、いかにして顕在能力を高めるかが、子どもの発達に関わってくるわけです。

お母さんのお子さんへの対応の仕方

幼児期は、一生の中で人間性(能力)の基礎となるものを最大限に育てることのできる絶好のチャンスです。子どもたちが自ら育んでいる「がんばる気持ち」を見守り応援してあげましょう。

子どもは気にいったものについてはがんばりますが、気にいらないものにはまるで力を発揮しません。ちょっと調子が悪いとすぐに逃げてしまうのです。けれども、最初は気にいらないものでも、いざやってみると「おっ、これは面白いぞ」となることが多いのです。

子どもは、自分が持った興味や目標に対しては、外から何も促されなくても積極的に取り組んでいきます。そして、集中力や持続力、また、少々の苦痛など苦痛とは思わない忍耐力を、自然に身につけていくのです。

しかし、お母さんが結果を急ぐあまり、何から何まで子どもの先回りをする形で手助けしたり、不必要と思われる行動を禁止してしまったりするのは考えものです。

はじめに申し上げたように、人は誰もが生まれつき素晴らしい能力を持ち合わせているのです。たとえば、数学が全然できない子どもでも、数学を伸ばすための潜在能力は持っているのです。

できるようになるまでの繰り返し学習によって、その能力を発揮させる。そしてそれを無理にやらせるのではなく、その能力を最大限に伸ばすために、子どもたちに自分で学習できる力、関心を持ち続ける力をつけるように常に心を配らなくてはなりません。

プラス思考でよいイメージを持つ

「イメージトレーニング」という言葉を聞いたことがあると思いますが、たとえばスポーツ選手が、よいイメージを描いて練習するという方法はすでに科学的に取り入れられています。野球選手が、ホームランを思い描きながら素振りをしたり、短距離ランナーが1位でゴールするイメージを持って走ったりする。それだけでなく、自分が優勝したり、試合に勝ったりすることを毎晩イメージをしながら、その感動を実際に嬉しいと感じられるまで思い描き続ける。先日はテレビでテニスの沢松選手が決勝の試合前日に、勝った時にとるガッツポーズの練習をひたすらしたことを伝えていました。

読んだことがある方もいらっしゃると思いますが、「マーフィー」の成功術ですね。「思ったことが必ず実現する。」これは、潜在意識に働きかけるものだと思います。胸が躍るほどによい結果をイメージして、物事をすすめるというのです。これは、子育てにおいてもとても重要なことで、子どもの潜在能力を信じて、嬉しくなるようなよいイメージをいつも描きながらお子さんに接するのです。反対に、ご自分のお子さんのことを「うちの子はダメだ、ダメだ。」と思って育てていればほんとにそうなってしまいますね。

でももし、それでも心配事があるという方は、「今できることを一つずつ精一杯やってみる」ことを心がけてみましょう。心配して思い悩むことはしないで、よいイメージを持ちながら、具体的にやることは目の前の問題を一つ一つ解決して行くということです。このプラス思考の子育てについては、これからも折に触れお話ししてまいります。

『集中力』について考えてみましょう

「カードやプリントに向かっても、すぐに飽きる。何かおもちゃで遊んでいても、ほかに興味がすぐ移ってしまう。一つのことに集中できず、いろいろ気が散ってじっとしていられない。」それでは、本当に何も集中できるものがないでしょうか? テレビを見ている時はどうですか? 好きなマンガのビデオを見ている時はどうですか? 公園で好きなお友達と遊んでいるときはどうですか?

集中力とはひとつのことに心を向けて、他のことに気持ちがいかないということです。何かしら、集中できることがあるならば、心配することはありません。お子さんは素晴らしい集中力を持っているのです。「あなたは全く集中力がないのだから!」なんていう言葉をお子さんに言ってはいけません。

好きなことには誰でも集中できるのです。好きでないこと・やりたくないこと・気が向かないことにグズグズするのは当然です。したがって、学習や習い事、お手伝いなど、やらなければならないことを、まず好きにさせることです。好きになれば、当然興味や関心が強くなり、集中できるようになるということですね。

本来楽しいことであるはずの『学習』や『勉強』が楽しく素晴らしいものになるか、面白くない「強いられる」ものになるかは、子どもの成長にとって非常に重要なことです。それでは、どのように興味や関心を持たせたらよいのでしょうか。教え上手なお母さまとは、子どもを『良い気分』にして、『やる気』を起こすことができるお母さまです。子どもに『強いる、脅す、交換条件とする、欲張る』という、逆効果で接しているお母さまはいないと思いますが、どうしたらやる気を起こさせられるのか、このことをいつも頭に置いてお子さんに接していただきたいと思います。

自由な発想ができる子に育てよう

自由な発想ができる子は性格も伸び伸びしているように感じます。逆に、型にはまり、発想の転換がなかなかできないお子さんは、言われたことはできるけど、挑戦力や応用力がありません。

自由な発想ができる子に育てるには、『自由』と『認める』ということがとても大切な要素となります。子どもの発想は、本来ユニークで柔軟性があります。どんなアイデアでも、何かのひらめきが感じられます。ただ、大人の常識的な概念で批評すると、その芽を摘んでしまう恐れがあります。子どもが出したアイデアについて、親は一切否定しないようにしたいものです。

太陽が何色で描かれようと、空が何色であろうと、それが子どもの感性で、今のありのままの心を表現しているのです。作文も絵画も、文字も音楽も、子どもの自由な発想で、自分の心をその創作物を通して自己表現しているのです。「手出し」「口出し」をしないで、見守ってあげましょう。子どもの考え出したアイデアを、認め・ほめてあげることで、ますます発想は豊かになります。

何でも親が先回りをして、子どものすることややることをかまい、「ああだ」「こうだ」と批評していると、子どもの自由な発想はしぼんでしまいます。子どものアイデアを親が感心してほめることで、子どもは「やる気」を出して、どんどんその能力を高めることができるのです。